第2章 1.Death & Strawberry
何だかよくわからないが、直後悲鳴のような雄叫びのような恐ろしい声が辺りに響く。
それを聞いた少年の頬に冷や汗が流れた。
「おい!おい死神っ!!」
「何だ?」
「何だじゃねぇ!!今のスゲー声聞こえなかったのか!?ありゃ一体何の声だ!?」
少女が眉を顰める。
「凄い声?そんなものいつ……」
再び声が聞こえ、次は聞こえたのか少女は顔色を変えた。
夜の街をもう一人の少女が走る。
跳ね上がった虚の霊圧。
(なんでこんな強い霊圧、気付かなかったんだ!!)
駆けつけたその先に、その化け物はいた。
今にも握りつぶされそうな少女。
生身の、生きた人間。
その少女を助け出そうとする金属バットを振りかぶる少年を見て、彼女は理解した。
「狙われてるのはお前だ、黒崎一護!!」
即座に手で陣を組み、死神特有の技を唱える。
「縛道の三十九 円閘扇」
虚と彼の間に円形の盾が出現すると虚の拳は怯んだように動きを止めた。
その隙を狙い、化け物の腕が切り落とされる。
「ぎゃあああああ!!!!!!」
叫び声があたりに響くと、掴んでいた少女が離されて宙を舞った。
「遊子!!」
見慣れたオレンジの髪の少年が少女を受け止める。
「遊子!大丈夫かおい!?」
「……………」
驚いて目を見開くが、ルキアの声に掻き消される。
「狼狽えるな小僧!貴様の家族はまだ誰一人奴に魂を喰われてはおらん!臨殿!」
名前を呼ばれのんびりとしている場合じゃないと少年の抱える妹を見て気を引き締める。
「ルキアは虚を、救命措置に入ります。」
「芭蕉……あんた」
「話は後です、妹さんをこちらに。」
「……ああ、頼む。」
渡された少女を抱き抱え、少女の患部に手を当てて術をかけていく。
見る見る回復していくのを見て、少年は口を開いた。
「虚ってのは魂を喰う為に人をおそうんじゃなかったのかよ。」
「……ああ、あの子から聞いたんですね。確かに、魂を喰らう為に人を襲うのですが、虚はより霊的濃度の高い魂を求めて彷徨っているんです。そのために無関係な人間を襲うということは、よくあることなんですよ。」
「どういう……」
「君が以前から霊を見ていたことは知っていました。そして君の霊的濃度の濃さは異常なことも……恐らく虚の狙いは君ですよ。」
ルキアの様子を見ながらそう答えると、苦戦しているのが見えた。