第10章 9.Monster and a Transfer
『なぁんてな。』
赤火砲の爆煙が辺りに広がり、虚の姿が見えなくなると同時に緑色の小さなそれがこちらに向かって飛んでくる。
高速でそれを切断すると、その間から赤黒い何かが私に張り付いた。
「なっ、なんですかこれは………ヒル………?」
『へへへへへ!その通り!そいつはヒルだ!吸い付いたらなかなか離れねェぞォ!!しかもただのヒルじゃねェ!!そいつは俺の……標的よ!!』
虚の口から舌が出され、辺りに黒板を爪で引っかいたような音が響く。
直後、張り付いたヒルが爆発した。
「っあっ!!!??」
「臨殿!」
慌てて寄ろうとするルキアに声をあげる。
「っくるなっ!!」
『おせェよ!』
まだ晴れぬ煙から再びヒルが出てくる。
ルキアがそれを浴びると虚は高らかに笑い声をあげた。
『そのヒルは小型爆弾よ!この俺の舌から出る音にのみ反応して炸裂する!俺の能力は飛べることだけだと思って油断してたろ!?まったく!死神ってヤツは!!』
煙が晴れ、虚の姿が見える。
刀を構えると、横に何かが立つ気配がした。
「チャドくん……」
『おっと、全員動くなよ、少しでも動けばそこの弱い死神の女と"こいつ"を爆発させる。』
がしゃりと地面に置かれたそれに、私は目を見開いた。
「……ゴメンオジチャン……ボク………ツカマッチャッタ……」
「その鸚哥………さっきわざわざ空に逃げたのはこれを持ってくるまでの時間稼ぎってわけですか。」
『刀を棄てな死神。』
腰から鞘ごと刀を抜き、地面へと投げる。
口を開いたルキアに、私は笑った。
「刀と鸚哥、チャドくんを頼みますよ、ルキア。」
『逃げ回れよ死神、俺がアンタだけを楽しく狩れるようになァ!!』
ダンっと地面を蹴る。
3人からできるだけ、遠くへと私は走り出した。