第10章 9.Monster and a Transfer
先へ先へと走る。
追いかけてくる虚たちの気配に私は跳ねた。
直後、足元をヒル達がびちゃびちゃ音を立てて弾ける。
ホッとしたのもつかの間、背後から再びそれが飛び出てきて、私は頭からそれを被った。
「っ!」
『かぶったなァ!!』
キィィンと音が鳴り、衝撃が脳を揺らす。
ぼたぼたと垂れる血液を左手で押さえ、揺れる視界に若干の吐き気を覚えながら再び走り出した。
『ほらほらほらァ!どこまで逃げる気だァ!?逃げてばっかじゃなくて反撃してきてもいいんだぜェ!?死神サンよォ!!』
ピタリと止まる。
すると虚から訝しげな声が上がった。
『何だ?諦めたのかァ?つまんねェな、死神追っかけ回す機会なんて滅多にねェのによ。』
「諦める?馬鹿なことを言わないでください。気付きませんか、近づいてくる気配を。」
『あ?』
「それに、反撃してきてもいいと言いましたね。なら、その言葉に甘えさせて頂こうと思いまして。」
『どういう……』
一陣の風が吹くと、私は腕を伸ばした。
しっかりとした、鞘の冷たい感触。
『て、テメェ、それはっさっき!』
「おかえりなさい" "、さっきは地面に投げてゴメンね。」
くるりと振り返り虚に目をやる。
『テメェ、あの鸚哥たちがどうなっても……』
「馬鹿ですねぇ、さっき音鳴らした時、ルキアたちのヒルに音は届いてなかったじゃないですか。」
斬魄刀の鞘に両手をかける。
「さて、と、これで私も本気で戦えます……最近いいとこなかったから、頑張らないと。」