第136章 179.Confession in the Twilight
五十年前 早春
「五十年前の春の朝 その年 最初の梅の咲く前に
私は妻を亡くした。」
「…存じてます。緋真様…兄様はその奥方に良く似た私を気に入り 私を妹として朽木家にお迎えになったのだと教えられました。」
「…そうだ
ルキアにはそう言って 嘘を教えるようにと 私が屋敷の者に指示したのだ」
ルキアの目が大きく見開かれる
「ーーー緋真は お前の姉だ ルキア」
「緋真は 現世で死してお前と二人 戌吊へと送られた。だがそこで 一人で二人を抱えて生きることに窮し まだ赤子だったお前を死神に押し付けて逃げたのだと そう言っていた。
緋真はそれを 悔いていた。私の妻になってからの五年間も 毎日のようにお前を探し続けていた」
ー白哉様
どうか 私の妹を見つけてやってください
そしてどうか 見つけたら
私が姉だとは明かさないでください
明かさずただ
白哉様のお力で
どうか妹を護ってやってください
私は妹を捨てました
姉と呼ばれる資格などございません
ですから どうか あの子には
白哉様を
兄と呼ばせてやって
頂きたいのです
最後まで
甘えてばかりでごめんなさい
白哉様にいただいた愛を
お返しできなくて
ごめんなさい
白哉様と過ごしたこの五年
緋真は夢のようでございました
「私がお前を見つけたのは その翌年だった。私は臨の元から無理矢理お前を朽木家に迎え入れた。」
流魂街の者の血を
貴族の家に混ぜることは
掟に反し
朽木家の名を下げると
屋敷の者達には反対された。
「だが 私は 緋真を朽木家に迎えた時にも その掟を破っている。だから私はお前を迎え入れた後 父母の墓前に誓いを立てた。
掟を破るのはこれが最後
これより先 如何なることがあろうとと 必ず掟を守り抜くと。
お前の殛刑が決定された時 私は判らなくなっていた
掟を守るという父母への誓いと
妹を護るという緋真との約束と
あの日 ルキアを幸せにすると誓った 臨との約束と
どれを守るべきなのか」
臨と白哉の視線があう
「あの時 兄にならば殺されてもいいと思った。」
そして一護へと視線を向ける
「…黒崎一護ーーー礼を言う。」
今度は ルキアへと目を合わせ、その小さな手を握った。
「 済まぬ 」