第84章 100.それは岩壁の花に似て
三日月が明るく外を照らす。
藍染惣右介は一人、紙を前に手紙を記そうと筆をとった。
しかし、その前に自室の扉の前に何者かの気配があることに気がつく。
その人物に緩やかに頬を緩めると、声をかけた。
「どうした、何かあったのかい?雛森くん。」
その人物の肩がびくりと跳ねるのが影で見える。
すると雛森は戸をゆっくりと開け、オドオドとした様子で頭をさげた。
「………少しだけ……お話をさせて頂けませんか…?」
こんな夜更けに無礼なことは承知の上と彼女は頭をさげる。
「ね、寝ません!隊長の前で粗相のないようずっと起きてます!だからどうかーー……」
すると藍染か雛森の肩に、先程まで自分が羽織っていた羽織を被せ、ゆっくりと応えた。
「僕が無礼を理由に追い返すと思うのかい?日頃僕はそんなに冷たく見えてるのかな……入りなさい、今日は大変な一日だったろう、落ち着くまでいつまででもいるといい。」
「阿散井くんは命に別状はないそうだよ。」
その言葉にホッと雛森が胸をなでおろす。
「よかった……」
本心から出た言葉に藍染は口角をあげると、言葉を続けた。
「朽木隊長は罷免を唱えたが反対にあってそれもなくなった、傷が癒えればすぐにでも本体に復帰できるようになる。」
「反対って…もしかして藍染隊長がして下さったんですか?」
「僕だけじゃないよ、彼は優秀だし皆に好かれてる。彼が罷免されて喜ぶ人なんて護廷十三隊に一人だっていやしないさ。………それで、どうしたんだい?」
「あ、えっ……と」
雛森の脳裏に臨の顔が思い浮かぶ。そして意を決してその名前を口に出した。
「臨先生の、ことで」
「………そうか、雛森くんは臨さんと仲が良かったから。」
「……あたし、臨先生のこと本当に尊敬してて……いえ、藍染隊長のことも本当に尊敬しているんですけど!……その、霊術院の時から先生にはお世話になってて」
「……僕も昔、霊術院にいた頃臨さんに鬼道を教えてもらっていてね。」
その言葉に雛森が驚く。
「藍染隊長もですか!?」
「そうだよ。あの頃は今よりももっと厳しくてね。陰では鬼教官なんて呼ばれていた時もあったんだよ。」
「おに……….きょうかん」