第3章 2.Statrte
ずるりと子供が転ぶのを眺める。
最悪、私が虚を処理しその後に彼を殺しても構わない。そう思いながら口を開いた。
「外道、と呼んでくれても構いませんよ、その自覚はありますから……ただ、目の前で襲われているから助けるだけなどという甘ったれた考えで刀を振るわないでください。」
死神は全ての霊魂に平等でなければならないのだ。
手の届く範囲、目に見える範囲だけ救いたいなどと都合よくはいかない。
「彼を助けるなら、他の、すべての霊も助ける覚悟を決めなさい。どこまでも駆けつけ……その身を捨てても助けるという覚悟を……」
そう言うと、彼の顔付きが変わった。
その顔を見て、私は微笑む。
「……覚悟は決まりましたか?」
「ゴチャゴチャうるせーんだよ!」
彼を縛り付けていた縛道が霧散すると同時に、子供を襲っていた虚の腕が吹き飛んだ。
「覚悟とかそんなモン知るか!俺は助けたいと思ったから助けたんだよ!悪ィか!!あんたと、こいつは違うのかよ!」
そう言われ、私は口を噤んだ。
「こいつもあんたも、あの時体張って俺を助けてくれた!あん時あんたらは"死神の義務だから"とかそんなムズカシいこと考えて助けたのか!?体張る時ってそんなんじゃねぇだろ!!」
返す言葉が出ずに、黙する。
すると彼は再び口を開き、動き始めた虚に斬魄刀を振り上げた。
「少なくとも俺は……違う!!」
ずぅんと地響きが鳴り、虚が地へと伏せる。
「確かに覚悟はしてねー、ホントにヤバくなったら逃げ出すかも知れねー……俺は赤の他人のために命を捨てるなんて約束ができるほどリッパな人間じゃねぇからな……………けど!残念なことに受けた恩を忘れてヘラヘラしてられる程、クズでもねぇんだよ!」
その言葉を聞いて、私は彼を勘違いしていたと気付かされる。
「手伝わせて貰うぜ、死神のシゴトってやつを!!嫌だっつってもやる!」