第38章 50.
「月の牙が天を衝く」
大虚が大きく吼える
その衝撃が大きく地に響き、辺りを震えさせると今度は大虚はヒビへと姿を引き始めた。
「メノスが………帰っていく………!」
誰かからそんな安堵の声が漏れ、一護は腕を上げVサインを作った。
「勝ォーーーーーー利!!!!」
その声に臨の顔が安堵に満ちる。
「なんて奴だ、あんな化け物を追い返してしまった……」
石田がそう呟き、Vサインを続ける一護へと視線を向ける。その少し後ろで、鉄裁はお見事と唸った。
「………よォ石田ぁ」
「………黒崎。」
二人が向かい合う。臨は居心地が悪そうな顔をしているが、一護を支えるように肩を回す。
「ナンだよ、ありがとーとかねぇのかよ、テメーのまいた騒動の尻拭いしてやったんだぜ俺は。」
偉そうな一護に、石田が眉を寄せる。それを気にせず一護は言葉を続けた。
「礼の一言くらいあってもいいんじゃねえのかって言ってんだ………」
直後、一護の身体が大きく揺れ倒れそうになる。
それに石田はフザケルなと立たせようとするが、その様子に一瞬動きが止まった。
「な、なんだよこれ!?」
一護の手にある斬魄刀の形状が崩れる。
その様子に臨は驚くが、直ぐに落ち着いたように一護の手に自身の手を重ねた。
「絶対に刀を離さないで」
そう言うと臨は真剣な顔で石田に頭を下げた。
「君のセンセイ、お爺さんを死なせてしまったのは私の責任だ……ここで見捨てられても仕方ないとはわかっている………君が死神を憎んでいることも………それでも、私は一護を助けたいんだ、頼む、手を貸してくれませんか………」