第38章 50.
死んだ、と思った。
諦めにも似た、以前感じた感情と同じような感情。
また、また私は私の目の前の人物を助けることができなかったのか。
だって仕方ないよな、私は止めたんだ、止めたのに言うことを聞かない彼が悪いんだ
そう、思った。
「………なんて、思えればいいんですがね」
一護の後ろで、一護の身体を支えありったけの霊力を一護自身へと注ぎ込む。
「臨っ!?」
「っ………しゅう、ちゅう………!!」
一護の刀から閃光が分散される。
異常な霊圧が辺りを包み込み、臨の皮膚が音を立てて裂ける。
その様子を見て、石田は驚愕した。
(黒崎の力が、増大している………!?)
砂の中に埋もれた砂鉄が強力な磁石で無理矢理掘り起こされるように、一護の霊圧が上がっていく。
それと同時に先程の一護の言葉を思い出した。
"常に全開なんじゃねぇの?"
(そうだ、冷静に考えればそんなことあるはずがない、どんなに霊力が高かろうと、その霊力の栓を常に全開にしていてはすぐに霊力は枯渇してしまう筈だ!霊力をコントロールできないということはつまり霊力を持て余しているということだ、もし蛇口をひねってとんでもない量の水が出てきたな。大抵の人間は驚いて本能的に蛇口を締めるだろう)
彼もそうだとしたら
黒崎一護、彼の普段の霊力が、常に閉じた状態なのだとしたら………
そして、何かのきっかけでそれがこじ開けられたならばーーーーー
大きな音とともに、天へと衝撃が登る。