第34章 46.Karneades〜Back to Back
優しい人だった
「師匠 師匠」
「何じゃ雨竜?」
過去の記憶
「この間お話になった200年前の滅亡ですが、あの時師匠は曖昧にされましたね、あれは結局死神達が悪いんですか?」
そう聞くと、師匠はふうとため息を吐いてそれは違うと答えた。
「わしはむしろ、悪かったのは死神達の言葉に耳を傾けなかった滅却師の方じゃと思っとる」
「何故ですか!全滅したのは滅却師の方なのに」
そう声を荒げる僕に、その通りと先生は告げ、悲しい目をした。
「たくさんの人が死んだんじゃよ、人が死んだ以上、どちらが良くてどちらが悪かったなどと考えることに意味はない、考えなければならんのはどうしたら2度とそういう事態を起こさずに済むか、それだけじゃ」
人でも死神でも 悲しい顔を見るのは わしゃ辛い。
目を細めそう呟く先生。
僕は師匠から人を憎むとか嫌うとか、そういった類のことを一度も教わったことがない。
優しい人だったのだ