第334章 ???.君が嫌ったこの世界で、君と出会えてよかった。
次に会えたのは それから約一月後。
現世での学年合同の偽虚の討伐演習
偶然にも、俺、京楽、そして臨は同じ班になり 一週間の実習についた。
よくよく考えてみれば、それは元柳斎先生の計らいだったのだろうが、それにより俺は臨とぐっと距離を縮めることになった。
それは夜のことだった。
野営で周囲を見張る為の 番をしていた彼女。
暖かいお茶でもと淹れて外に出ると、小雨が降っていた。
「中に入っていた方がいいんじゃないのか?」
「構うな。今日の番は私だ」
濡れた黒髪が いつもより艶を増し、白い喉へと張り付く。
「お前は体が弱いんだろう?とっとと中に入れ。実習中に肺でも悪くされたら困る」
アルトの冷たい声。
「それは俺からも言えることだよ。はい、お茶」
「………感謝する」
寝食共にした一週間。
不器用でいて、それでも優しい彼女自身に触れることができた。
「あー、そのだな 俺はお前にとって どんな存在なんだ?」
それは 人通りの多い霊術院の廊下での質問だった。
無関心 無表情 無愛想の三拍子が揃った 彼女の感情が知りたかった。
「鬱陶しい奴」
だから、そう言われたのが凄く嬉しかったんだ。
他人に関心のない彼女が、俺のことを負の感情だとしても認めてくれているということが。
それに訝しむ彼女に慌てて言い訳する。
「い いや!臨は何事にも無関心なイメージが強くてな!いやー 少しでも俺に関心持っててくれて助かったよ」
側から見れば 一世一代の告白だろう。
まあ、そのつもりで彼女に質問をしたんだが。
すると彼女は 納得したかのように目を伏せるだけで、告白の返事を言おうとはしなかった。
それに慌てて きちんと自分の気持ちを伝える。
「ああ ちなみに俺は臨のことが好きだからな」
「私は別に好きじゃない」
予想のついていた回答に 思わず笑みが溢れる。
周囲の目が集まるのを感じ、彼女は少しばかり気まずそうな顔をして俺に背を向ける。
俺はそれについて行くと、彼女は少し困ったような笑みを見せた。
初めて見た その表情に胸の鼓動が高まる。