第334章 ???.君が嫌ったこの世界で、君と出会えてよかった。
その日から 俺は臨に一日に一度告白するようになった。
放課後の鬼道の練習場で唐突に
剣道場での掛け声の代わりに愛をさけんでみたり
蔵書室で後ろからそっと抱きしめてみたりと 色々試した。
そのせいだろうか、彼女の色んな表情が見えるようになり、彼女の雰囲気が緩和し 彼女自身が他人から好かれ始めるようになったのは。
俺はそれがとても嬉しかったし、同時に非常に嫉妬した。
俺しか知らなかったはずの 彼女の照れた顔や少し不機嫌そうな顔、少し困ったように笑う顔が 俺の知らないところで他人に知られているのかと思うと、その腹が煮え繰り返りそうな程に。
「好きだよ 臨」
外の実習、彼女が木の下で髪を直そうとした瞬間を狙い、逃げられないように追い詰めその体をつめた。
「返事を……聞かせてほしいんだ。いつもみたいなあの遇らうような返事じゃなくて……」
「それは……性交渉を前提とした付き合いをしたいととってもいいのか?」
その赤裸々な言葉に面喰らうも 頷く。
「………ならば 交際でもしてみるか?」
正直 フラれる気はしていなかった。
彼女は押しに弱いことを 俺は京楽から聞かされていたし、ここ数日の臨の反応を見て強硬手段に出たというのもある。
だというのに
「お前、随分と顔が赤いな」
俺の頬に触れる冷たい手に 心臓が跳ねる。
「ほ、本当に 付き合ってくれるのかい?」
「少し付き合えば、お前もそのうち熱が冷めるだろう?それまでの間だけだ」
その言葉に 高鳴った心臓が非常に耳に響く。
「本当に……」
「う、浮竹!?おい浮竹!!」
そのまま俺は臨へと倒れこむと その優しい香りに好きだと感じた。
「臨」
堪らずに口付けし、その香りを堪能する。
「ちょ、落ち着け浮竹!先生!!権田原先生!!浮竹がーーー!」
耳元で騒ぐ臨の声が、遠くに聞こえた気がした。