第19章 19.6/17 op.3
川辺でウロウロとしている少年を見つけ、その隣へと降り立つ。
きっと私のことなど見えていないのだろう。それでも、私は声をかけた。
「ごめんね。」
6年前 6月17日
その日、天気は雨な上やけに多い虚の出現に、私は疲労していた。
その日4体目の虚を狩った直後、鳴り響く伝令神機。舌打ちして内容を確認すると、虚が出現したと情報が入ってきた。
「なんだってこんな日にこんなに……いや、こんな日だからか。」
濡れた重い袴がうっとおしく足に絡みつく。
足が重い。
出現場所には少し遠い。
霊圧を感知するに、狙うはきっとあの親子だろう。
ならば、きっと大丈夫だ。
その謎の安心感によって、私は過ちを犯したのだ。
出現場所の川辺へと着くとすでにそれはいた。
「グランドフィッシャー……」
想定外の大物。
静かに佇むそいつと目が合うと、それはにやりと笑い指をさした。
『遅かったな死神、先程の女はとてもうまかったぞ。』
そこには血塗れの女性が、庇うようにオレンジの髪の少年を抱き抱え倒れていて
「 」
黒崎家から母親という存在を奪い取ったのは、私だ。
あのとき、私は何故大丈夫と思ってしまったのか
「誰……誰かいるの?」
少年から今にも泣きそうな声が聞こえる。
それにバッと振り向くと、彼は声を荒げた。
「誰か、誰かいるなら、母ちゃんを助けてよ……!お願いだから………だれか……!」
その場から逃げ去るグランドフィッシャー。
届かない刀。
今でも忘れない、忘れることなどできない。
助けられなかった。
そして、私は逃げたのだ、自分の罪から。
まだ幼い彼に、私の罪を押し付け、まだ幼い彼に自責の念を押し付け。