第266章 ---.2
西流魂街第一地区 潤林安
志波空鶴邸では、死神能力譲渡会の準備が着々と進行していた。
あまり人目につかぬようにと、屋敷の裏にそびえ立つ巨大な花火台・花鶴大砲の台座部分に、力の器となる刀が設置された。
刀の周囲には、霊圧を完全に遮断する布でできた小型の天幕が張られ 周囲にいる隊士たちを隠した。
「臨サン、ありがとうございました!」
扇子を広げ あっけらかんとそう告げる浦原喜助に 臨は一瞥すると 別にと小さく呟いた。
「私は 私のできることをしたまでですよ」
「けど、知っていますよ。臨さんの斬魄刀は酷く気難しいって。よくそんな彼?が あの刀の依り代を作ることに了承してくれましたね」
その言葉に 臨の腰にさしてあった斬魄刀がカタカタと揺れる。
「皇骸浅打と私は 本質は非常によく似ていますから…………私が一護のことを気に入っているから 彼も気に入ったんでしょう」
そう言うと、浦原はそっスかと興味なさそうに呟いた。
「姉さん!」
隊士たちの群れの中 ルキアが臨を見つけて近づく。
それに臨は右手をふると ルキアは臨の横に立ち、浦原を睨みつけた。
「まさか貴様、姉さんになにかヤラシイことを」
「されてないから安心してください、ルキア。それよりも 頑張りましたねえ、こんなにみんなが集まるなんて」
その右手がルキアの頭にポンと置かれ そっと撫でられると 彼女の頬は赤く染まりありがとうございますと俯いた。
「私も、まさかこれ程広がるとは思いませんでしたが……」
「それだけ、一護が慕われているってことでしょう」
すると 夜一は少しばかり臨を心配そうに見つめ 口を開いた。
「……どのような形にしろ、涅マユリの邪魔が入るのは目に見えておる。霊圧の注入を急がせたほうがよいじゃろう」
その言葉に 三人は頷くと 臨は天挺空羅をかけ 人々の脳内に直接語りかけた。
"聞こえますか?皆さん、霊圧はじわじわと長く ではなく、どーんと短時間で注入してください。どうかよろしくお願いします"
直後 列の進むスピードが格段に速くなる。