第265章 ---.The Death Save
夜
十三番隊の隊首室である 雨乾堂の襖を開けると、よく見慣れたその人物に臨はほんのり頬を緩ませた。
「おかえり、臨」
「ただいま、十四郎」
そう言う臨の腕には ダンボールが二つ乗せられているだけだった。
「荷物は、それだけかい?」
「十四郎、知っているでしょう?私の私物が少ないことなんて、昔からじゃないですか」
その言葉に 納得すると、浮竹は臨の荷物を取り上げた。
「自分でやります」
「こういうのは男にまかせて………ゲホッ」
突然咳き込む浮竹に、臨が休んでてくださいと告げるも、彼はいいからと二箱いっぺんに持ち上げた。
「今のは、ただむせっただけさ」
「無理はしないでください。お前は体が弱いんですから」
「大丈夫だって」
雨乾堂の中にある 別室への扉を開くと 6畳程の小さな部屋に浮竹は疑問を投げかけた。
「本当にいいのかい?こんな狭い部屋で」
「はい。私の部屋も大きさはこの程度でしたし。特に問題はないかと……あとは布団を運び込むだけですし、そもそも……」
臨の顔が ほんのり赤く染まり、視線が逸らされる。
それに浮竹も 何故か満足そうに笑うと、部屋に荷物を置いてすぐに臨の顔に右手を添えた。
「相変わらず、かわいいな」
「こんなお婆さんを口説くお前は、どうかしていますよ」
唇が重なり、室内が静かになる。