第264章 ---.冬は終わり 椿は夏の夢を見る。
「何処まで覚えている」
「朽木隊長に首を落とされるところまでは」
その言葉に、白哉は驚愕した。
「………そこまでは覚えているのか」
「ええ。自分でも信じられませんが」
臨が自身にかけられた布団を握りしめる。
それにシワが寄ると、白哉は渋々といった様子で、口を開いた。
「…………兄が絶命した直後、尸魂界に再度地獄の門が出現し、地獄の番人 クシャナーダが兄を連れて行こうとした。それをルキアが拒んだ為に、奴は腕を再び地獄へと戻したわけだが………」
「クシャナーダが、ですか」
理解できないとばかりに、臨が俯く。
するとその様子に納得したのか、白哉は言葉を続けた。
「地獄の瘴気を浴びた直後、兄の肉体は霊子へと変換され、再構成された。地獄の罪人と同様に」
「…………そう、ですか。だから目が………」
臨の手が、自身の目元に触れる。
見える視界。
「……………白哉、ルキア。二人とも私のことについて、誰かから何か聞きましたか?」
「この件について、緘口令が敷かれている為、総隊長殿からもこれといった説明はなかった」
「私も………」
「そうですか」
臨の目が、そっと細められる。
「……ありがとうございます。白哉、ルキア。…………申し訳ないのですが、少し一人にしてもらえませんか?」