第8章 誠凛へ
それからは特に問題なく練習は続いて行った。体育館の窓より上に太陽が登ったちょうど良い頃合いで相田が「それじゃみんな、そろそろご飯にするわよー!」と声をかけ昼休憩に入ることになった
ゾロソロと家庭科室に移動すると、昼休憩少し前から桃井と苗字がカレー温めたりご飯をよそったりして準備していたため、既に食べれる状態にまでなっている。なお冷蔵庫に入れられたつめた~いお茶付き
「昨日から名前ちゃんが頑張って作ってくれたから残さず食べなさい!」
「名前ちゃんのご飯バンザーイ!!」
「小金井くん私のご飯じゃそんなに喜ばなかったわよね?」
相田の低い声に慌てる小金井はスっと水戸部の後ろに隠れて、みんなの笑いを誘う
それぞれなんとなーくグループになり席に着いて、他愛ない話をしながらカレーを食べ始めた
「苗字のメシ食うなんて中学以来だな」
「虹村サンなんでそういいつつオレの肉盗ってんすか!」
「奪うやつから盗ってんだよ」
「まだ奪ってねぇだろ」
「昔テツから唐揚げ奪ってたじゃねぇか」
「そんな昔の話掘り出してどうしてぇんだよ青峰!」
そんな様子を見ていた誠凛の新入部員は少し驚きながら「帝光中の人達ってなんか、意外と仲良しなんですね」とぽつり独り言のように、だが誰かに問い掛けるように呟いた
「そうだね、僕も対戦した時は怖かったけど…やっぱり、すごいと思ったよ」
「いやフリが1年の時のビデオ今度見てみろよ、チワワだから」
「はぁ!?河原だってビビってたじゃねーか!」
「いやあれは誰でも足の震え止まんねーって…」
そんな会話を女子3人で固まって聞きながらくすくすと笑う。桃井はいつかの時と同じように「男の子っていいなぁ」と呟くが、それを聞くのは彼女にとっては初めてのこと
この空間にいる彼らを見て「そうだね」と苗字は優しく微笑む
視線の先では火神がモリモリとリスのようにカレーを食べており、嬉しそうにそれを眺めてゆっくり食事を取って昼休みを過ごした