第8章 誠凛へ
「名前ちゃんドリンクの作り方わかる?」
『作ったことないけど、知識として入ってる』
「そっか、じゃあ作っちゃお!」
作った記憶はないのに身体が、頭がどう動けば良いかを覚えている
手際よくやる苗字の姿を見た桃井はふっと何かを思い出し笑って、口を開いた
「…昔、名前ちゃんが部活休んだ時に」
『うん?』
「ドリンクにプロテイン入れたらみんな倒れちゃって」
『…プロテイン?』
「みんな無事だったからよかったんだけど」
『プロテインだけで人間って倒れるものなの…?』
「他にも色々混ぜたからかな?えーっと…たしか」
『いや、知りたくはない。大丈夫』
思わず言葉を遮ってまで言ってしまったが、桃井は「私も覚えてない」と笑っていた
雑談しながら作業したせいか時間はそこまで掛からず、走っている姿を見る相田も驚いた
「やっぱ2人だと早いわね」
『今の誠凛にマネージャーはいないんですか?』
「いないわ。最近1年生、もしくは早く学校終わった時に私がここ1年くらい手伝ってるの」
「大変ですよね。桐皇みたいに人が多いともっと大変ですよ」
「そこだけは人が少ないことに感謝だわ」
『…私、いたんじゃないですか?』
一瞬ギクッという顔をした相田とあ。という顔をした桃井は必死に言い訳を考える
上手い言い訳が見つからず困っていたが、苗字の頭にポンッと手を置かれて返事が返ってきた
「バスケ部は12月に引退なんだよ」
『…え』
「よっ、悪いな遅れて!」
『虹村さんと…灰崎…君?』
爽やかな笑みを浮かべる虹村の右手の先には首元を捕まれボロボロになった灰崎がいた。イケメンが台無しである
なんで2人がいるんだろうと疑問に思った苗字はふと「灰崎に比べればマシだろう」と誰かが言っていたのを思い出した