第8章 誠凛へ
翌週、誠凛に行くため彼女の家に迎えに来たのは桃井であった
だがこの後、黒子と火神と道中待ち合わせをしてある。彼らがよく一緒に登校していたからだ
「おはよー名前ちゃん。行こ行こ!」
『うん!』
まるで小さな子供のように手を繋いで外へと歩き出す
ニコニコと色々話していると桃井が唐突に「うん」と何かを決したように足を止めて彼女の方に顔を向けた
「火神君に、告白しない?」
『えっ』
「しよう!しようよ!」
『急に…どうしたの?』
「名前ちゃんには幸せでいて欲しいの!」
苗字は思わず赤面してしまった。そう意味じゃないとは分かっていても
そんな桃井からの思いに彼女は悩み始めてい た
『でも、火神君が私のこと好きかどうか分からないし…』
「当たって砕けるべきだよ!」
『砕けちゃダメじゃない…?』
「大丈夫!例えばだから!」
『んんー…?』
それで良いのかと疑問に思いながら彼女は確かにそれも一理あると思った
火神君なら結果が残念でも変わらずに接してくれそうだと、自分のどこかで言っている
『…でも、うん。してみよっかな』
「ホントに!?」
キラキラと目を輝かせる桃井にどこか既視感を覚える。確か、赤司君との帰り道だと思い出した
そうか、彼から見たらこんな感じだったのか
「思い立ったら吉日!今日告白しよ!」
『今日!?』
驚きを隠せないまま慌てていると、「絶対大丈夫!」と言って笑った。桃井の本音は、彼女が赤司の事を受け入れることであるのに
だがそんなことを知らない苗字は顔を赤らめながら「が、頑張る…」とだけ言って頬を押さえていた
そんな苗字を見ながら桃井はふと気がついた。こんな風に恋の話をする初めてかもしれないと
別にしなかったわけはないのだが、中学時代彼女は恋なんて話題に出しても興味ないという態度をとっており、話が盛り上がらなかったからである
そう思うと嬉しい気持ちと苗字の存在を思い出して桃井の目が熱くなった
そんな桃井の気持ちを知るはずもない苗字は告白するという事態に、1人でパニックになっていた