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【黒子のバスケ】トリップしたけど…え?《4》

第2章 プロローグ




空から水が、降ってきた。もちろん雨以外の何でもない

天気予報は雨なんて言っていなかったため傘なんて持ってなくて、それこそたかがこれだけのために傘買う気にもならなかった

否、今は何となく雨に当たりたい気分だった


自分なりに頑張っているのに結果は全く真反対の方向に行ってうまくいかず、全てが空回りしてすべて同じようになってしまう

そんな思いからもう何もする気も起きなくて、傘をさすことすらめんどくさく感じているのかもしれない

そう考えるあたしの耳元にはいつつけたのか、イヤホンがはまっていて、音楽がシャッフルで流れていた

向こうの世界では、すべてが上手くいったのに。そう思い出したらキリがないが、それはあくまでもトリップして特典が付いていたから。というのが多分正答であろう

仲間が居て、努力が報われ、すごく良かった。けれどこっちのあたしは美人じゃないし、勉強もそこそこ、運動も得意とは言えない

向こうと同じように努力してもそもそも根本的な所から違うのだが、それでもあたしは同じを求めてしまう




『ただい、ま』



そうモヤモヤさせながら家に着き、鍵を開け中に入り、寝坊したため朝の状態のまま放置されている布団の上に寝っ転がった

濡れているまま寝っ転がったら夜寝る時に不快に感じるだろうが、それは仕方ない。今とても、着替える気力がない




『…さよなら、したのにな』



あれから、彼らからもらった物が入っている箱はあけてない。それなのにこんなにも考えてしまうなんてなんともまあ、未練がましいのだろう

どうしてこんなにがんばっているのに。そう考えていると頭の中がぐるぐるしてきて泣きそうになった

その瞬間、あたしの耳元でついたままになっていたイヤホンから、彼らの声が曲が、聞こえてきた



『テツヤ、涼太、緑間…大輝、敦』



それぞれの名前を呼んでから最後、「征十郎…」と呼ぶと溜めていた涙がこぼれ始めて、布団を濡らした




『会い、たい』



そう呟いた声は布団に吸収されて、自分でさえ聞き辛い声だった
叶うまで後何ヶ月か、それとももう一生来ないのか、あたしには理解ができなかった

そんなあたしの様子を、ただ1人が寂しそうな眼で見ていた





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