第6章 退院と
色々な検査を受けたりほぼ普通にまで動けるようになった苗字は、4月の頭、退院を決めた
だがしかし4月と言えば入学式である。もちろん大学に進学した彼らは4月になってから忙しくなったのか会う頻度が減っていた
退院の日、ほとんどの知り合いが学校や入学式であるという事で、少し寂しい感情が彼女に芽生えている中、彼女に「よう」と声がかかった
『虹村先輩、学校は?』
「ばーかオレはまだ休みだよ」
『え、でも誠凛のみなさん学校って…』
「アイツらはOBとして誠凛に行ってんだろ、そろそろ部活動勧誘だしな」
『あー…大変ですね』
「つーか苗字よりも部活とか入学式って…あいつらも大変だな」
『あ、いや、私がそっちを優先して下さい。ってお願いしたんです』
「ったく…じゃあオレしか来ねーのかよ」
『えーっと…海常の森山さんが笠松さん連れて「それは来なくていいな」』
虹村の一言に苗字はキョトンとした顔をしてから「森山さんが聞いたら怒りますよ」と言いながら笑って、彼の顔を見た
すると「黙っときゃバレねーよ」と言ってから「まあ、今日はオレが退院を祝ってやるよ」と髪をわしゃわしゃと撫でて、苗字は元々綻ばせている顔を尚綻ばせた
『父の事、思い出します』
「…父親?あーっと…虐待してたっつー?」
『え、いや?私のお父さん、母と再婚してから亡くなっちゃったんですけど…』
「…ま、まて、お前…確か両親からの虐待から逃げてここ来たんだよな?」
『あ、逃げてきたのはあってますけど…私お父さんと、仲良かったですよ?」
「仲が、良かった…?」
『むしろ再婚相手の母の方が悪かったですね…私の事をライバルだと思ってて…お父さんの1番が私だったことに妬いて暴力振るってきたんだと思います
それでいざお父さんが亡くなったらいない様な扱いして…たまにストレスが溜まると私に手をあげて…逃げてきて正解だと思いますね、本当に』
「…お前、幼少期の記憶あるのか…?」
『え?むしろ何で無いんですか…?』
それを聞いた虹村は目を見開いて、いつだかの帰り道、彼女は「虐待されて家を出た」と言っていた事を思い出し、ついでに「幼少期の記憶がない」と言っていたことを思い出した