第6章 退院と
「もしかして、お前…なあ、中3の夏休み明け骨折したりしたか?」
『…ああ、はい。しましたね。故意の交通事故だったんですけど…相手が母の再婚相手だったんですよね、顔が父によく似てましたし…』
そう言いながら苗字は「ごめんなさい陰口みたいなの言ってしまって、気分悪くなりませんでしたか?」と聞いて、少し悲しそうに笑って、そんな様子を見た虹村は混乱する脳内を必死に稼働させて、どういうことかを理解しようと集中していた
そしてある結論についたのか、虹村は再び目を見開いた
「お前、もしかして「名前ちゃん退院する用意できたー!?」」
虹村が何かを聞こうとすると嬉々とした雪が病室に入ってきて、看護師さんから「静かにするように」と少し怒られていた
それを見ながら苗字が落ち着いた様子で「大丈夫です。終わりました」と返事をして、重い荷物を持とうとした
するとそれを見た虹村が「おら、病み上がりが重い荷物持つな」と言って彼女から荷物を奪った
『あ、っと、ありがとうございます』
「あら虹村君、ありがとー。とりあえず私がある程度する事は終わらせたし、名前ちゃんがするべき事も終わらせたから…」
『もう帰って良いんですか?』
「ええ…車呼んだけど、どうする?荷物だけお願いして虹村君と帰るの?」
『じゃあ、そうします』
そう言った苗字は「いいですか?」と虹村に問いかけて、「ああ」と返答を聞くと雪は了承したのか「じゃあ虹村君頼むわね!」と言って次の病室へと歩き出してしまった
彼女を見送った苗字は上着を着てから虹村の横に立ち、どこか病室を見ながら寂しそうな顔をして出て行った
真っ白な病室には、誰も残っていなかった