第24章 動物園
「なでなでしたから行く」
『えらいねー、手洗ったら行こうか』
併設されている手洗い場で手を洗い、タオルハンカチで拭く
迷子の子も自分でタオルを持っていたのでしっかり拭き、綺麗になった手を苗字にみせてきた
「手、拭けた」
『うん。偉いね』
「おねえさん、歩くときは手繋ぐんだよ」
『お、おお…はい』
それは園内のルールなんだろうかと自分より小さな手を握り、一緒に歩き出す
一応赤司にどこに向かっているかを連絡し男の子を見ると、既に落ち着いているので彼女は雑談を始めた
『うさぎさん好きなの?』
「うん。耳長くてかわいい」
さっきのあの女の子からの確認はこれかと理解し男のこの話に相槌を打ちながら歩いていると、正面から赤い髪と先生らしき人物が走ってきた
手を離し駆け寄って先生に抱き着く男の子を見て、2人は胸を撫でおろす
「ありがとうおねえさん、おにいさん」
『もう迷子にならないでね』
手を振った男の子はそのまま戻っていき先ほどうさぎが好きか聞いてきた女の子と話している
笑いあっているあたり和解したんだろうと、彼らが去っていくのを見送った
「すぐ見つかって良かったよ」
『うん。聞き分けいい子で良かった』
「そうか」
『…弟いたら、こんな感じなのかな』
「いるだろう」
誰か分からなかった苗字は何回か瞬きした後、一時期しっかりした弟とお姉ちゃんごっこをしていたことを思い出す
『もう弟じゃないでしょ』
「そうだね、彼氏だ」
『分かってるじゃん。はい』
苗字が赤司に向かって手を差し出す。先ほどの彼女のように瞬きをした彼は、反対の手を重ねた
「名前から手を繋ぐなんて珍しいね」
『歩くときは手を繋ぐんだって、さっきの子から教えてもらった』
「それがいいね」
手を繋いだまま園を回り始める。意外に手を繋ぐって難しくないんだなと笑いながら一緒に園内マップを広げ、次の場所へと足を進めた