第19章 大晦日
一体部屋まで来て何の用事だろうと思うと、雪からカイロを渡された
「今日寒くなりそうだから、カイロ持ってった方がいいと思うの」
『ありがとうございます』
「あったかい格好で行ってらっしゃい」
そう言って出ていった彼女からもらったカイロはすでに封があけられた中身だけだった
今は日が出ているから良いかもしれないが夜になれば一気に寒くなるだろう。カイロを上着のポッケに仕舞う
雪が出ていって間もなく苗字も自室から出て玄関に向かうと、火神と自分の母親が喋っている姿に苗字が焦りを見せる
「あ、名前ちゃん。火神君待ってたわよ」
『ななな、なんで?』
「中入って待ってればっていったんだけどね、首を縦に振ってもらえなくて」
せっかく綺麗にした髪を崩れるのも気にせず彼女は玄関まで走った
急いで靴を履いて火神の隣に立つ。雪はにこにこと楽しそうである
「もう準備大丈夫なのか」
『大丈夫!行ってきます!』
「いってらっしゃーい」
手を振る雪に手を振り返し、彼女は家から出ていく
出る前に玄関の姿見で最終チェックをしようと思っていたのに、すべてが狂ってしまった
一方、閉ざされた玄関のドアを見ながら雪が少し悲しそうに笑う
オレンジ色のマフラーをしていなかったことが少し引っ掛かっていたが、考えていてもしょうがないと彼女はリビングに戻っていった