第19章 大晦日
『何で火神君家まで来たの?びっくりしたよ』
「最近迎えに行ってたから、つい」
『ついじゃないよお…来るなら言ってよ…』
自分の母親と恋人が喋っているという状況、なんて心臓に悪いのか
マフラーなんていらないんじゃないかと思うほど顔が熱くなった。一気に体温が上がった彼女は手で顔を仰ぐ
きっと火神から見た顔は真っ赤なんだろうなと思い、必死に手で仰いだ
「昼飯食ったか?」
『ううん、まだ』
「なんか食うか」
『火神君の食べたいのでいいよ』
「チーズバーガーだな」
『…火神君が言うならそこでいいけど』
「いや、適当に食い行こうぜ」
そう言ってマジバではなくファミレスに行くことになった
カフェでもいいと言われたが、カフェで火神が満足する姿が想像できなかったのでこちらにした
大晦日とは言え混んでおり、順番待ちすることになったが喋っていればあっという間だった
「なんにするか」
『私ランチセットでパスタにしよっかな』
「麺なー…腹減るんだよなー」
『火神君の好きに食べていいよ』
「ハンバーグと…ドリアと、オムライスと…」
注文してから待っていると、2人とは思えない量の料理が運ばれてくる
店員から何とも言えない目で見られたが気にしていない
美味しそうにもぐもぐと食べ進める火神を見ながら彼女はリスみたいでかわいいと思いながら笑う
彼女はゆっくりとパスタを食べ進める。いつぞやのカレーの時同様、食べる量が全然違うのに食べ終わる時間が一緒であった
「そろそろ行くか」
『うん、そうしよっか』
上着を羽織り荷物を持って顔をあげると火神が消えている。そして伝票も
はっと振り返るとすでに火神がお会計を始めておりレシートをもらっていた。急いで追いかけて扉の前に立つ
『火神君!』
「おう、先いいぞ」
『あ、ありがとう…じゃなくて、ちゃんと払うよ』
「いや、ほとんどオレだし食ったの」
『それは否定しないけど…自分で食べたものくらい払うよ』
「いい」
財布をカバンから出そうとするが止められる。こんなやり取りを京都でもしたことがあるような気がして、頭を抱える
普段は全然似ていないのにそういうところだけ似ていると思いながら、財布をカバンに戻し次の場所へと歩き始めた