第19章 大晦日
大晦日、火神と約束した神社に行こうという予定のため準備を進める
さすがに神社だけでは味気ないから昼間からデートすることを火神から提案され、予定より早い集合になった
髪にアイロンを通し用意していた服に着替え、自分自身に化粧を施す
化粧というものはこういう大事な日に限って失敗しがちなイメージがあったが、今日は何とか上手くいった
『…マフラーも、してこうかな』
防寒対策のためマフラーもしていこうとクローゼットを開ける
あるのはオレンジ色のマフラーとグレンチェックのマフラーだった。なんだか心がざわつき、オレンジ色のマフラーを手に取る
―――誕生日おめでとう
女性の声がした。自分の誕生日に誰かからもらったのかと推測した
だが桃井の声とは違う。雪の声とも違う。今まで見てきた際の自分の声に近かった
自分の記憶かなにかだろかと見つめたままぼーっとしていると、扉の向こうから声をかけられる
どうぞと言うと、雪が入って来た
「名前ちゃんもう出かける?」
『はい。そろそろ』
「そのマフラー懐かしい!冬場になるとよくつけてたわよ」
『そう…でしたっけ』
オレンジ色のマフラーを持つ手にかすかに力を入れる。つける気は起きなかったので、一緒にかけてあったグレンチェックのマフラーを彼女は選んだ