第18章 ウィンターカップ 後編
「なんだ、昼って」
『あ、なんでもないんです。黛さんこそ何か用あるんじゃないですか?』
「なんもねえ」
『何もないのに声かけてくれたんです?』
まあでも他校の私に用事がある方が変かと考え苗字が笑う。それを黛が懐かしそうな表情で見ていた
誰にも共有できないこの記憶を忘れてしまえればとも考えるが、忘れたくないとも考える
そういえばこいつはインターハイの時も1人で歩いていたなと黛は思い出した
「誠凛の奴らは一緒じゃないのか」
『なんか落ち着かなくて1人で来ちゃいました』
「そうか」
自分で聞いてきた割には興味がなさそうな黛だが、冷たいわけではない
苗字が缶を開けようとすると無言ですっと奪い取って開ける
思わぬ対応にぽかんとしていると、そこに先ほど話題にあげた赤司が現れた
「名前、黛さん」
『赤司君、久しぶり』
「ああ、会場で見かけてはいたけど話すのは久しぶりだね」
『みんなと一緒にいるから話しかけづらくて』
「気にしなくていいよ。黛さんも、来ているなら言ってください」
「言うわけないだろ」
「黛さんから連絡来ることないですもんね」
確かにマメに連絡を取るタイプではないと推測し、赤司の言葉に頷いた
それに黛は返事をせず背を向けて歩き始めてしまったので、「缶、ありがとうございました」とお礼だけ伝えた