第15章 みんな一緒に
そんなやり取りの後、家の前に辿り着き苗字が火神にお礼を告げる
『ありがとう火神君』
「おう、またな」
いつもならこのやり取りの後苗字はすぐ家に入るののだが、今日は火神のボストンバッグを見つめたまま門を潜ろうとしない
ボストンバッグの上には先程彼女の頭を撫でた左手が添えられている
何を見ているのかわからなく、いつもと様子の違う彼女に火神が戸惑いながら動くのを待つ
『火神君、お願いごと、いいかな』
「なんだ?」
『手、握っていい?』
「…はあ!?」
『しー!夜なんだから静かにして!』
もうコンビニくらいしかやっていない時間、火神が困ったようにそっぽを向きながらボストンに置いていた手を差し出してくる
その手を、握ってみた、握手じゃなくて差し出してきている手と鏡になる手で
緊張なのか、ドキドキした
「な、何がしたいんだ」
『ううん、ちょっと触ってみたかっただけ。ごめんね』
「いや…別に、いいけどよ」
『ありがとう送ってくれて。またメッセージ送るね』
「…おう、またな」
火神を見送って、門をくぐり家の中に入った。既に家族は寝ているのか仕事なのか、電気は消えている
疲れていて眠たい身体を何とか動かし、体を洗い湯船に浸かった
なんだか心が寂しくて、一人音を立てないように涙を流した
いつも彼に送っている、おやすみメッセージを送付する気は起きなかった