第15章 みんな一緒に
「何迷ってんだ」
『わ、あ、灰崎君。アイス食べたいんだけどそんな量いらなくて』
「それならこれとかいいんじゃねえの」
まさかの灰崎だったことに驚きながらも彼の指さす先を見ると、果物の実を模したアイスが入っているものだった
たしかに小さく封も出来るがこのあと電車に乗るのだ、なるべく手を汚したくないと苗字は考える
『手汚れない?』
「汚れる」
『う…じゃあ違うのがいい』
「ああ?」
そう言って彼は再度アイスケースを見てから、チューペット状のものを半分こ出来るアイスを指さしている
「これ半分でいいか」
『え、半分にしてくれるの?』
「ああ、オレと」
『それならいいかも。手汚れないもんね』
勧められた袋に入ったチューペットのアイスを取ると、灰崎の後ろから彼より少し小さい背の男が現れる
彼の肩に手を置き、にやりと笑いながら話しかけた
「はーいざき」
「おわ!虹村…センパイ」
「何やってんだ苗字のこと恐喝か?」
「ちげーよ、アイス半分にしてやろうって話してただけだっつの」
「ふーん?やさしーじゃねか灰崎」
にやにやしながら見てくる虹村に対して反論するとどうなるかわかっている灰崎は何も言わなかった
彼らのやり取りをぼーっと見ていた苗字が持っていたアイスを奪い取って、虹村はすたすた歩いて行ってしまう
『ちょ、虹村さん」
「やさしー灰崎クンに奢ってやるよ」
「まじ!?オレ唐揚げも買おうと思ってたんだけど!」
「それは自分で買え」
「ああ?ついでに買ってくれたっていいだろ!?」
「言葉遣い悪い子には買ってやれねえな~」
「オネガイシマス」
レジ前で面白い事をやっている彼らを1人置いていかれアイスケースの横で見ていた
店員さんが唐揚げを取っているあたり奢ってくれたのであろうと推測しながら、2人に近寄る
買い終わった虹村は灰崎に唐揚げを渡し、苗字にアイスを投げる
「苗字、ほら」
『おっとと、ありがとうございます。すみませんご馳走様です』
「気にすんな」
投げられたアイスを何とかキャッチして、お辞儀をし顔を上げると彼らは外に向かって歩き出す