第14章 冒険に行こう
なんとなく朝早く目が覚めることが続き、二度寝をする気分もやることも無いのでレポートをまとめる日々が続いていた
ある日ルーズリーフが切れたのと、涼しくなってきたので散歩ついでに出掛けるかと、早い時間からやっている主要駅前の本屋さんに来た
『ルーズ、リーフは…』
文房具売り場を歩いて目当てのルーズリーフも見つけて、今日は特にやることもないしと書籍コーナーに足を向ける
話題の映画原作、賞受賞作品、気になるものはあったが手が伸びるものはなかった
何かに呼ばれている気がして気になる方向に足を進めると、よく知った雰囲気の人が立っていた
『黒子君?』
「…お前」
声をかけたがそこに居たのは黒子ではなく、雰囲気がよく似た男だった
『すみません。知り合いと間違えちゃって…』
「…まあ、そういう役割だったからな」
『……黒子君のこと、知ってるんですか?』
灰色の瞳が苗字を見つめる。誰かわからない苗字は混乱を隠し切れない表情で見つめ返す
「…黒くなったりコロコロ変わって大変だな」
彼が見つめる目から困惑が伝わってくる
まるであの夏の時のような瞳が、こちらを向いていた
『私のことも、知ってるんですか』
質問に彼は口を閉ざしたままだった。そんな彼をNAME2#は見つめ返す
彼の鋭い視線は苗字を貫いていたが、心に何かを感じる
それを言葉には出来ないけれど、彼のことを知っているような気がした。
「案外、悪くなかった」
彼の言ってることが分からない苗字は首を傾げる
そんな様子を見て彼は悲しそうに笑う
そんな彼の表情に気づかないほど鈍くは無いが、どう声をかければいいのか分からず言葉を探す
名前も知らない彼にどんな話をすればいいのか考えていると、彼から声をかけてきた