第19章 大晦日
火神の家に戻り、彼は「急いでシャワー浴びてくるから待ってろ」と言って室内を駆けていった
シャワーを浴びている間流石にウロウロするわけにはいかないのでリビングでテレビを見る
最近はやりのアイドル、昔から有名な歌手などいろんな人が出てきて面白かったが、なんだか火神が浴びているシャワーの音がやけに耳に入ってしまい顔が熱くなる
見始めて3人目になるところでリビングの扉を勢いよく開いた
『…お帰り?』
「…待たせたな」
『そんな急がなくてもよかったのに』
彼の髪から水滴がぽたぽたと垂れる。時間を見るが、まだ年越しには時間がある
『髪乾かそうよ火神君』
「乾かさなくても平気だろ」
『平気じゃないよ風邪ひくよ、すぐ乾くから、ほら』
彼を押して風呂場の方へ戻す。大人しく彼がドライヤーをかけ始めたので待っている間に忘れ物がないか再確認し、リップを塗りなおす
10分もしないうちに髪が乾いた状態の火神が戻ってきたので支度をし火神の家を出る
いつもなら人通りが少ない時間だが、今日は大晦日のせいか人も車も多い
屋台などが出ている大きな神社に行こうということになり、電車に乗るが車内すらも人が多い
満員電車に近い状態、火神とはぐれそうになるが彼は彼女を端に追いやり、守るように前に立った
『ごめんね火神君、きつくない?』
「気にすんな」
周りに人が多いから、距離が近く動悸が早くなる
早く着いてほしいと願っていると、やはりみんな目的地は一緒なのか駅に着いて扉が開いた瞬間人の流れがすごくなる
火神とはぐれそうになり、なんとか背が大きい彼を目印にその場まで行くと手を掴まれる
「…つつ、繋いどいていいか」
『…はい』
「はぐれないようにするためだけだからな」
思わず敬語になってしまったが、彼の顔は本当に真っ赤だった
つられて赤くなる苗字は火神に手を引かれるまま駅の中を歩く
駅に到着してしまえば人の混みはそうでもなく、歩けないとか動けないというほどではなかった