第14章 冒険に行こう
「なんか本探してんのか」
『あ…そう、なんですかね?』
時間潰しとはいえなくて疑問形で返すと、彼は目線を本棚に向ける
疑問形で返してしまったのでこちらから話もしづらいとか考えていると、かわいい女の子の絵が表紙の本を差し出されていた
「ん」
『なんですか?これ』
「ラノベ」
『らのべ』
「それ3巻だけどな」
チリッと頭が痛くなった。針を指に刺してしまった時のような一瞬の痛み
夏祭りの時ほどでは無いし一瞬のことで、痛みが残るなどなく騒ぐほどのことでも、休むほどでもない
「読むならちゃんと1巻から読めよ」
『分かりました』
読んだことない類の本だが彼の手から1巻と2巻受け取る
ルーズリーフと一緒にレジに持っていこうかと値段を確認していると、微妙な空気を壊すように1人現れた
「黛さーん!」
「葉山」
彼らの名前を呼ばれたのを聞いて理解する。赤司がいた高校の選手だということに
無冠の五将と、黒子と同じスタイルでバスケをしていた人だと桃井からもらったプロフ帳の情報が蘇る
「あれ、何してんの?ナンパ?」
「んなわけねーだろ」
「レオ姉!黛さんナンパしてる!」
「本屋では静かにしなさい。アンタがトランプ買うって言うから来たのに」
「いや良く考えれば本屋にトランプとかないよねー!」
「だから言ったじゃないの」
「いやトランプって紙で出来てるしあるかなーって」
知っているようで知らない人に囲まれ、唯一知り合いでありそうな黛に目線を送るが彼は小説の立ち読みを始める
気づかれないように居なくなろうかと気配を消し、立ち去るための重心移動を始めると声をかけられた
「名前」
『わ、あ、赤司君』
「あら、征ちゃん知り合い?」
「実渕達も知ってるだろう、帝光の監督だった人だ」
「あ、聖母?だっけ?」
「やだ、雰囲気違ったから気づかなかった。ごめんなさいね」
謝る彼を前にそんなに今の私と彼女は違うのだろうかとふと疑問に思う
実渕の謝罪に対して何も言わない苗字に赤司は珍しいと思いながら、いつまでも本屋に入り浸るのもなんだと彼らを促し会計を済まして外に出ることにした