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【黒子のバスケ】トリップしたけど…え?《4》

第13章 夏祭り 後編




少し人が少ないところに移動して、始まったばかりのせいか空いていた石段に並んで座る


『ごめんね黒子君。付き合わせちゃって』

「名前さんこそ、ボクに付き合わせてしまってすみません」

『黒子君は、優しいねぇ』


彼の優しい嘘に苗字が頭を押えながら笑う
先程の赤司の言葉が、頭から離れない

ふと目の前に影ができたので顔をあげると隣に居たはずの黒子の水色の瞳が心配そうにこちらを見つめている


「大丈夫ですか?」

『なんか、最近頭が痛くなることが多くて』

「体調悪いんですか?」

『ふとした時に… この間は赤いカチューシャ見た時かな?
その時はすぐ治ったんだけど…』


黒子の中に赤いカチューシャに1人だけ思い当たる人物がいた


『でも今日私楽しみにしてたんだ
友達と夏祭りくるの、はじ、めてで…』


言っててふと違和感があった。友達と夏祭りに来るのが初めてなのか?
ふと自分の中にいる友達を思い出そうとしたのに名前も、誰も思い出せない
そして気づく。母校は分かるのに、その学校に行っていた間の記憶も全くない

そもそも自分の思っている母校にも通ってなかったのだから、そんな記憶が存在することがおかしいのだ


「名前さん?」

『…黒子君、私友達いないのかも、しれない』

「…ボク達は友達じゃないですか?」

『違うの…私の記憶の中には、誰もいない』


どれだけ記憶を探しても自分が橙崎に拾われるまでの記憶と中学3年生で事故にあった記憶しか見つからない

調子悪そうにしている彼女の姿を見た黒子が苗字の口角を人差し指でむにっとあげる

驚いた彼女は目を丸くして、流しかけていた涙が一筋こぼれていく


「確かに今の名前の過去を知っている人はいないかもしれません
でもボクは今名前さんが居ることは、忘れませんよ」

『黒子君』

「笑わないと、幸せが逃げちゃいますよ?」

『…うん』

「笑う門には福来るって言うじゃないですか」


頬を上げていた指を離して、黒子が笑う

その笑顔は優しくて、微笑まれた苗字は安心してしまう
微笑まれただけなのに、どうして安心してしまうのだろう

そんな優しい笑顔につられて、苗字も優しく微笑み返した





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