第13章 夏祭り 後編
「名前っちー!!」
しばらく黒子と苗字が2人で話していると黄瀬が飛んでくる
黄瀬の後ろには他の7人が順々にこちらに向かって来ている
彼らの手にはぬいぐるみやら食べ物やら両手が塞がっていて、一足先に飛んできた彼の手からはスポーツドリンクが苗字に差し出されている
「名前っち飲み物買ってきたっス!はい!」
『ありがとう黄瀬君』
「赤司っちが熱中症になってると困るからって!
オレが買ってきたっス!」
『そうなの?ありがとう赤司君』
「気にするな、本来なら先程来る前に買っとくべきだったんだ」
「それにしても皆さん凄い荷物ですね」
「そろそろ花火始まるから買い溜めて戻ってきたのだよ」
『え?じゃあ下戻った方がいいかな?』
「いや激混みだからやめた方がいいぞ。マジ無理進めねぇ」
「ここくるだけで疲れちゃったもんねー」
「思ったより時間かかっちゃったし」
「ここでいいっしょ!見えるし!」
「現代っ子だなコイツら」
それぞれ適当に石段に座っていく中、苗字の隣に座っていた黒子が火神に譲ったため並んで座る
彼はフランクフルトを食べていて、まだ食べるのかと黒子から突っ込まれていた
そんな雑談をしていると唐突に暗闇に明るくなる
「あ、あがったっスよー!」
「きれー…」
「やっぱ近いと音もでかいなぁ!」
『ね、大声じゃないと会話できない…』
「たーまやー!」
花火に見とれていると体制が辛くなってくる。座る姿勢を変えようと手をずらすと苗字の隣に座っている火神の指に触れてしまう
火神もそれに気づいたようで、苗字の方を向いて笑う
彼はの口元は「気にすんな」と動いていた気がした
『…はぁ』
彼女の小さく短い溜息は花火の打ち上げ音に掻き消されてしまう
そんな大きい花火の打ち上げ音よりも心臓の音がの方が大きいし、動きがとてつもなく早い
花火の打ち上げが終わるまで彼の指先と苗字の指先はほんの少しだけ触れたままだった