第12章 夏祭り 前編
リスのように膨らました頬袋のものをしっかり噛んでから、ゴクリと飲み込み火神は口を開く
口元にソースがついている
「余ったら食ってやるよ」
「オレも食べるよ~」
「オレも食う」
「オレも食うー!」
「高尾がいなくとも3人のうち1人いれば問題ないだろうね」
「いや赤司ヒド、間違ってねぇけど」
「ボクの分も頼みます」
「うわ~かき氷で頭キーンてする~」
「急いで食べるからなのだよ」
「急がないと溶けちゃうも~ん」
とりあえず焼きそばやお好み焼き、その他もろもろ買ってみんなで分けていく
出来たてと会場の雰囲気なのか、いつも食べるご飯より美味しいと苗字は話していた
そんな話をしていると、よく聞いたことのある声が耳に届いた
「あ、黒子ー!火神ー!」
「小金井先輩、伊月先輩、水戸部先輩も」
「いやなんかよく見るとすごいメンバーだな」
「どーもっス」
「日向さんはいないんですか?姿が見えないのだよ」
「カントクと2人で場所取りしてるよ」
「ていうか2人にしてあげてるんだけどね」
「…木吉もいんのぉ?」
「迷子だよ。でかいからすぐ見つかるかなって買いに来た」
伊月の言葉にコクコクと水戸部が頷く。そんなどこか彼の表情は困ったような顔をしている
下からワン!と鳴き声が聞こえて下を向くと、2号が苗字の足元をウロウロしていた
「あ!黒子犬!」
「テツくんにそっくりのー!」
「元気か~コイツぅ!」
「今日はリードをしているんですね」
「ほら、前に2号迷子になっちゃったから」
「あ!笠松センパイと森山センパイと巻き込まれた時っスね!」
「オレもそん時初めて黒子犬に会ったなぁ」
会話を聞いている苗字にまた頭痛が走る
勿論彼女の身に覚えはない。が、その話題で話は進んでいく
ようやく頭痛が落ち着いてきた頃には2号が迷子になった話題は終わって別れの流れになっている
「じゃあ木吉見かけたら戻ってるって言っといてー」
「ウス」
「はめ外しすぎんなよー」
そう言って3人は去っていく。2号は彼らの半歩後ろを短い足を動かしていた