第3章 ~SHIRAISHI KURANOSUKE~
長い黒髪がサラサラゆれていて
俺は春休みに皆が騒いどったのを思い出していた
「..........白石ッ!!!」
謙也の声に一気に喧噪の中へ引き戻される
「白石どないしてん?話の途中でだんまりになりよって」
「....なぁ謙也、春休みにお前らが見た子って―――――」
謙也に話かけた途端、ガラガラと教室のドアが開く
立っとったモンは急いで席につく
教師の姿とはほど遠い薔薇柄のチューリップハットに無精ひげ、こんな出で立ちの先生は一人しかおらん
「げ..オサムちゃんやん」
「おい謙也、げは余計や」
笑いながらテニス部顧問でもある渡辺オサムが教壇に立つ
まだ若く飄々とした性格は生徒達からも人気があり、オサムちゃんの愛称で呼ばれとる
「お~白石も!このクラスやったんか」
「てか、センセが担任やったんですか?」
「俺は副任!誰が担任なんてめんどいもん...」
先生心の声もれてるー
つっこまれながらセンセはヘラヘラしている
「担任のセンセは出張でな、代わりに俺がHRすんでーてか席めちゃめちゃやないか」
初日で適当に座っている皆をみてセンセが呟く
「....ま、ええか」
「「いいんかいっっ」」
一同揃えてツッコむところはさすが大阪といったところで
皆が和んだところにオサムの手拍子がパンっとなった
「おー忘れとった!!!みんなー転校生がおんねん」
その声にザワザワと辺りがざわつく
「転校生やって、千歳のコトやろか?」
謙也は俺の方に顔を寄せる
千歳千里はこの春、九州から四天宝寺に転入してきた
転入前やったが春休みから練習に参加していて顔馴染みだ
「せやな、こん時期やし他にもおらんやろ」
俺らがこんな話をしとる間にセンセは廊下に向かって声をかけた