第3章 ~SHIRAISHI KURANOSUKE~
その日の放課後、誰もいなくなった教室に私はいた
その前の席で蔵は日誌を書いている
シンとした教室は空気が重い
蔵の書き進めるペンの音だけが響いていた
「もうあとちょっとやし、先帰ってええよ?」
「ん......」
さっきから蔵は何かにつけて私を帰そうとする
そんなに2人きりが嫌なんだろうか
私は意地から席を立とうとはしなかった
なんか...
悲しい通りこして腹が立ってきた
よそよそしい蔵に
それを受け入れてる私自身に
私はちょうど書き終えた日誌を閉じ、持っていこうとする蔵から日誌を取り上げた
「なっ...なにすんの?」
「私に何か言うことない?」
「何かって何?別にあらへんよ」
「じゃ、言い方変えるね...どうして話してくれないの?」
驚いた顔を見せる蔵はその言葉に明らかに表情が変わった
「.......別に、今も話てるやん」
「そうじゃなくて!!どうして前みたいに話してくれなくなったかって聞いてるの!!」
「気のせいやって」
それでもしらばっくれる蔵に私はギュッと胸の前で日誌を握りしめた
「私なにかしちゃったかなぁ...それとも嫌いになった?」
「っ...―――!!そんなコト...」
そう言ったきりなにも言わなくなった蔵はなんだか苦しそうで
(どうしてそんな顔してるの?)
私は蔵に近寄ると手を伸ばしそっと蔵の頬に触れた
蔵は一瞬ピクリと反応を示すとゆっくりと視線を合わせた
久しぶりにあった蔵の瞳はすごく綺麗で、それだけで胸が早鐘を鳴らす
でもその瞳の奥は酷くゆらいでいるように見えた
(どうしてそんな目で見るの...?)
お互いに見つめ合っていたが、蔵はそっと視線を逸らすと私の手から遠のいた
(ぁ.....)
その行動がすごく寂しくて胸がズキンと痛んだ