第3章 ~SHIRAISHI KURANOSUKE~
蔵にもドキドキしてほしい
私はその思いで蔵に答えた
「.....マジのトーンで言われると、結構クルな」
「....前のお返し」
下を向いている私には蔵の表情が見えなかったけど少しでも蔵が照れたりしてくれていたらいいなと思った
そしたら少しは私のコトを女の子として見てくれるかな
蔵はそのまま体制を変えることなく、息遣いがすぐ近くに感じられる
今なら聞ける?
今日怒ったあのコト...
「あの、今日怒ったのって――――」
私が口を開き俯いていた顔を上げた瞬間、
急ブレーキがかかり少しの悲鳴と同時に皆が同じ方向に傾いた
そしてそれは蔵も同じで....
私は自分の唇が何かで押さえつけられているのに、
それが蔵の唇だと気付くのに時間はかからなかった
「「――――――!?」」
お互いに目を見開いたまま、自分達がキスをしているという
現実に思考がついていかない
車内にアナウンスが流れても私達は固まったままで再び動き出すと漸く唇が離れた
そして駅に着くと無言のままホームへ降りる
沢山の人が乗り降りし、電車は走り出して人が閑散としてきても私達はホームに立ちすくしていた
どうしよう
事故とはいえ蔵と...キスしちゃったんだよね?
そう実感すると急に恥ずかしさがやってきて一気に頬が紅潮する
(うわ、絶対真っ赤だ...)
隠しきれない頬を気休めに手で隠し、ちらと蔵の方を見る
すると蔵の顔も赤く染まっていて...
私は目をまばたかせた
(蔵真っ赤...)
キスしたんだから当たり前かも知れないけどなんとなく蔵は大丈夫なんだと思っていたから拍子抜けだった
それと同時に嬉しくもなった
蔵も恥ずかしいと感じてくれたことがとても嬉しかった
私は思わずクスッと笑うと今度は蔵が目を丸くした
「なんで笑ってんねん...」
「なんでもない...あの、ごめんね?私がいきなり上向いたから」
「いや、こっちこそ...まさか急にブレーキかかるなんて思わんし...ごめん」
「いや、私こそ..」
また沈黙が訪れ私たちに気まずさが生まれる
そんな時、先に口を開いたのは蔵だった