第3章 ~SHIRAISHI KURANOSUKE~
一緒に帰っている蔵はいつもと同じ様子でやっぱり冗談で怒ったんだと思った
千歳にもその後は普通だったし
皆で帰るなか、一人、また一人と別れていって最後は蔵と私だけになっていた
電車はちょうど帰宅ラッシュで駅に止まる度沢山の人が入ってくる
ドアの隅に追いやられた私達はギュウギュウに押されながらも必死に耐えていた
「なんや今日はいつにもまして多くないか?」
蔵が周りの迷惑にならないようにそっと小声で話してくる
「そだね、バス乗れなかったから仕方ないよ」
また人が乗ってくる
少しウンザリしながらも私は自分の体に圧迫感を感じないコトに気が付いた
(あれ?全然苦しくない...)
ふと視線を上げると蔵が私の顔の横に両手を付き、
人ごみから守ってくれている
その手は微かに震えていて蔵は相当な付加がかかっているんだろう
「蔵...」
「ん?どないしたん?」
蔵はなんでもないような涼しい顔をしていて私は胸がキュッと締め付けられた
「なんでもない...//」
私は恥ずかしさから睫毛を伏せるとぎゅっと蔵のシャツを握りしめた
「もうすぐ着くから我慢しぃや?」
優しく降りてくる蔵の声に私は静かに頷いた
(やっぱり蔵はすごく優しい...今日のコト...聞いてみようかな?)
あれは冗談?
もしかして本当に怒ってた?
本当なら―――
そう考えると胸が熱くなっていく
恥ずかしさからより蔵のシャツを握りしめると
ふっと蔵の声が降りてきた
「..シャンプー変えたん?」
「え?」
「なんや前よりエエ匂いする」
そういって私に顔を近づける蔵の吐息が耳を擽る
耳元で喋る蔵の声は小声なぶん掠れていてより艶のある声が私を高ならせた
(こんな状況...蔵絶対に無自覚でやってる//)
自分ばっかドキドキして、蔵はどうってことないんだろうな
そう思うとなんだか悔しくなってきた
「うん.....蔵に...もっと萌えてもらおうと思って」