第3章 ~SHIRAISHI KURANOSUKE~
目の前に蔵の気配を感じる
「.....アホやな、俺より頑張ってるヤツなんかぎょーさんおるわ」
「っ...それでも!!それでも私は蔵に報、」
「それ以上は」
蔵が言葉じりを奪い私の肩口が掴まれたかと思うと、
すぐに肩に重みを感じ私は視界の晴れない瞳で蔵を見ようとする
「それ以上は、言わんで」
そう呟いた蔵の声はひどく揺らいでいて私は見るのをやめた
蔵は私の肩に頭を預け、泣いていた
やっと泣くことができた蔵の涙をなんだか見たらいけないような気がして
私は宥めるようにそっと蔵の背中に腕を回した
「....ありがとう」
蔵はそう言うと私の腰に腕を回し、お互いに抱きしめあった
どのくらいそうしていたんだろう、
お互いのすすり泣く声も聞こえなくなっていたのに
私達は抱き合ったままだった
(蔵、泣き止んだ?もう大丈夫かな...)
「蔵...?」
私は蔵から手を離すと覗うように軽く胸を押して離れようとする
すると蔵は離れるところかより一層抱き竦められ、私は蔵の胸の中にスッポリと収まってしまった
「まだ...ダメ」
耳元で掠れた低い声が囁き私は一瞬、心臓がはねた
(ダメとか...可愛い)
不謹慎にもそう思うが、それよりも思ったよりも逞しい体と細く綺麗な手は意外にゴツゴツしていて
男の人なんだと思うと一気に頬が熱くなった
(心臓がうるさい...)
くっついてる所から聞こえてしまうんじゃないかとさえ思うのは、蔵の心臓の音も感じるから
トクン、トクンと一定のリズムで刻む蔵の音に次第に私の音も落ち着いてくる
(なんだか...すごい落ち着く)
ゆっくりと目をとじようとした時、体に解放感を感じようやく離されたんだと顔をあげると、蔵の顔がすぐ近くにあり、
私は思わず固まってしまった