第3章 ~SHIRAISHI KURANOSUKE~
「あ―――――――――――っ!!!!」
その声に蔵はビクッと体を震わせ驚いて振り返った
「な...!?」
「あ――――っ!!あーもうっ!!」
「ちょお待って、どないしてん急に大声出したりなんかして..」
苦笑いしながら近づく蔵を私はキッと睨むと蔵はより一層驚いた顔をした
「サン?まさか怒ってる?」
「......蔵!!」
「はいっっっ!!てか俺!?」
私自身も自分の行動にビックリしているくらいだから蔵はよっぽどだろう、かなり驚いた顔をしている
「誰よりも勝ちたそうだったから部長にされたって言ってたよね!!」
「あー...そんな理由やったかなぁ」
「蔵もそう自分で思ってるんだよね!!」
「俺!?あ、あぁ...まぁな」
「それって蔵は誰よりも負けん気が強いってコトじゃない!!」
「――――――っ!!!」
その言葉の瞬間、蔵の瞳の奥に悲しみが揺らめいた気がした
「なのに....どうして」
私はどうしてもそれを見逃すことができなかった
「どうして蔵は泣かないの!!!?」
少しの沈黙の後、蔵はポツリと呟いた
「...泣いても結果が変わる訳とちゃうやろ」
「もう何でいつまでも部長でいるのよ!!」
「引き継ぎもまだやし一応まだ部長や!!」
段々と大きくなる2人の声が響いていく
「本当は!!喚き散らしたいほど悔しいんじゃないの!?」
「は、が俺の何を知ってんねん!!」
その言葉に胸がチクリと痛む
でも蔵はもっと―――
「知ってるよ...蔵のコトなら」
私はスカートをギュッっと握りしめると蔵をしっかりと見つめた
「確かに出会ってまだ半年くらいだし、皆より付き合いは短いかもしれないけど...それでも私は...」
蔵の努力だってわざわざ言わないだけで
私はずっとそんな蔵を見続けてきたんだから
「蔵は頑張ってるもの...」
私は感情を抑えられずに次第に声が掠れていく
それは自分が泣いてるからだと漸く気付いた
「...頑張ってる人は報われなきゃいけないんだよ...」
溢れた涙が私の視界を歪ませた
だからすぐ目の前に蔵が近づいたことに気が付かなかった