第3章 ~SHIRAISHI KURANOSUKE~
夏休みに入り大会が始まった
蔵達3年にとっては最後の大会、彼らは順調に勝ち進み大阪代表として全国へ進んだ
ここまで一緒に過ごしてきて、本当に強いと思った
特に蔵は、まだ実力の半分も出していない
本当に強くて、だからこそ本気を出せるコトがなくて、
私は自分らしいテニスが出来ないで憂いているコトが悲しかった―――――
全国大会準決勝
東京の青春学園との試合、相手の不二君との試合は接戦末、
7-5で蔵が勝った
周りはすごく喜んでいたが蔵は違った
マッチポイントまで軽々追いやったが相手の技に苦戦を強いられ、攻略するも最後は相手のミスで終わった
ミスを誘ったのは蔵の実力だと思う
でも蔵は...
蔵は試合を終えるとベンチへと戻ってくる
その顔は勝者の顔ではなく、蔵は皆に見えないように眉根を寄せると目を閉じて唇を噛みしめていた
「....勝ったもんがち、でしょ?」
「........せやな」
私が蔵に向かって呟くと、蔵は少しだけ笑みを見せてくれた
それしか今は言えなかった
勝ったもんがち
これが四天宝寺のスローガンで
チームの勝利の為に一切の私情を切り捨てているコトは部長としての蔵の信念で
絶対にそんな感情を表に出さない蔵は
最後まで白石蔵之介ではなく
四天宝寺の部長だった