第3章 ~SHIRAISHI KURANOSUKE~
フワリと優しい感触に私はただただ驚き、少し見じろぎをするが蔵は抱きしめたままだ
「く..蔵..?」
「...何で言わへんねん、めっちゃケガしてんのに」
「だって...」
「いや、ちゃう..そんなんとちゃう...」
蔵のか細く言う声と吐息が耳をくすぐり少しじれったい
「...ごめん」
「ぇ....?」
「のケンカ、あれ違うたんやな..俺の、俺の為に怒ってくれたんやろ?」
「っ....どうして..」
「ほんまごめん...」
そう言ってより一層ギュッと抱きしめる蔵はとても温かくて
私はせきを切ったように涙が溢れて止まらかった
「許せなかった..」
私は眉を寄せギュッと手を握りしめる
「蔵はテニスすごく上手くて!すごく強くて!!本当にカッコいいもの....!!!」
「..」
「こんなに頑張ってるのに...」
ポロポロと流れて止まらない涙のように
私の言葉も止まらない
「なんで私ばっかり怒られなきゃいけないの..」
「うん」
「私、悪くないもん...」
「うん..」
「蔵のばか...」
「うん、ほんま俺は大バカやな...」
そんな私を宥めるように頭を撫でる蔵の手はすごく優しくて
私は縋るように泣き続けた
暫くして、大分落ち着いた私はそっと蔵の胸を押す
ゆっくりと離れた温もりに、少し寂しさを感じた
「大丈夫か?」
「うん..ごめん」
蔵は涙で滲む私の目じりを長い指の先で拭う
その仕草に私は自然と息を漏らした
「ん....」
「なんか、可愛えぇな..」
「ぇ?」
「いや、ヘンな意味とちゃうくて!のこんな顔めったに見れんなーって...まぁ泣かせたんは俺なんやけど」
「ぁ、あんまり見ないで...///」
私は蔵の言葉に一気に頬が赤くなりそれを見られまいと顔を背けた
「はは、めっちゃ顔赤い」
「言わないで!!!」
なんだかからかわれてる気がする
さっきの怒られ方といい私のコト妹とでも思っているんじゃないだろうか
そう思うとなんだか胸の奥がざわついた
(あ、あれ?)
私はその考えを消し去るようにフルフルと頭を振った