第3章 ~SHIRAISHI KURANOSUKE~
ある日、部活を終えた私は教室の自分の机をあさっていた
「よかった~忘れるトコだった」
課題に必要なノートを忘れた私は一人教室に来ていて
ノートを鞄にしまうと私は何気なく窓に近づき夕日を眺めた
(もうだいぶ落ちてるな..)
夕日は落ちかけていて、薄いオレンジ色になった空を見ていた私は端の方に見えるテニスコートに人影があるコトに気が付いた
(あれ?部活はとっくに終わったはずなのに...)
気になった私はまたテニスコートに戻っていった
テニスコートに近づくにつれて、その人影の存在が明らかになった
「白石君...?」
そこには、部活を終えたはずの白石君がいて
彼は私に気付くことなくラケットを振り続けていた
普段の冷静で基本に忠実な感じはなく、どこか焦ったような、少し感情的な姿は私が声をかけるのを忘れるほどだった
反対側に落ちている球の数がすさまじい練習量を物語っていて、私は初めて彼の裏の部分を見た気がした
皆が完璧だと言っていた白石蔵之介は
本当は誰よりも努力家で――――
(たぶん本当は―――)
完璧でいなきゃいけないんだろうな
そう思うとなんだか自分が思っていた彼の本質に気付けなかった自分が悔しかった
「?」
はっと意識を戻すと汗を拭いながら白石君がこっちを見ていた
「ぁ...」
私は咄嗟に笑顔を作ると白石君へ近寄っていった
「帰ったんやなかったん?」
「うん、教室に忘れ物しちゃって..それで..いつもしてるの?」
「あ~見られてもうたなー、秘密の特訓やったのに」
白石君はハハッと笑いながら答える
「皆には内緒やでー?こんな必死になってんのカッコ悪―――」
「カッコ悪くなんかないよ...」