第6章 ~ZAIZEN HIKARU~
「財前...光くん?」
「はい?」
「練習中にごめんね、今日は見てるだけだからもう行ってもらって大丈夫だよ」
「はぁ...でも部長が戻ってくるまでは、ええですけど」
「ありがとう♪」
話すことすら浮かばないのになんでこんな言ったんやろ
黙ったまま目線を彼女に向けると、ニコニコと笑っている
(なんでこの人はこんなに笑うんやろ...)
オレはニコッと笑ったりするのはすごく苦手な部類で、自分でも現実的で冷めてると思う
ギャラリーの中には、それがクールでカッコイイとか言うてるヤツもおるみたいやけど
「財前くん」
その言葉に現実に引き戻される
「この前わざわざ教室に来てくれたんでしょ?」
「いや、部長達に用があったんで...」
「でも嬉しかった、ありがとね」
そう言ってほほ笑む彼女にオレは納得した
(謙也さんらが騒ぐんも分からんではないな)
作り笑いでも張り付けた笑みでもないその笑顔にオレは気恥ずかしさで目線を逸らした
「いっぱい話せたー?財前」
部長がこっちに向かってくる
「あ、じゃあ...」
オレは部長が戻ってきたのでその場から去ろうとする
「あ、待って!!」
「?」
「名前、言ってなかったよね?です!改めてヨロシクね!!」
オレは頭だけ下げるとコートへ戻っていった
コートへ戻るとすぐに練習を再開した
(名前...知っとるわ)
それだけ思うと、ラケットを振り上げた