第5章 ～CHITOSE　SENRI～

その笑顔に私はいつの間にか涙が溢れて零れ落ちた
止めようと思ってもどんどん溢れてくる涙はとどまるコトを知らない

「何で...笑ってるの？」

「何でっちゃろう...」

何てコトを聞いてるんだ私は
そんなの決まっているのに

泣いたら思いや気持ちが今までの分全部溢れて
塞き止められなくなるから

だから千歳は泣けないのに

「は...キレイかね...」

私の溢れてくる涙を拭いながら千歳はそんなことを呟く

「ばか...千歳が泣けないから私がこんなに泣くんだよ？」

「うん...ありがとうね...」

そう言う千歳の瞳が一瞬、揺れた気がした
でも次の瞬間には千歳に抱きしめられていて、千歳がどんな顔をしているのかはもう分からなかった

私はまた涙が溢れ、それを誤魔化すように強く抱きしめ返した




あの件があって以来、私と千歳の距離が近づいた気がする
なにが変わったとかいう訳ではないけど、空気というか...柔らかくなった気だした

そんな雰囲気がむずがゆく感じながらも心地いい気もしていた

そんな時だった