第5章 ~CHITOSE SENRI~
「千歳の〝かわいい”のベクトルが分からん!!」
白石はおもむろに言った
急に歩いてるとき、
「謙也くんはほなこつかわいかね~」
喧嘩してるとき、
「白石もオサムちゃんもかわいか~」
どこをどうみたら可愛いのかという時でも千歳は当たり前のように〝かわいい”という
「クセなんやろか?千歳の〝かわいい”のベクトルがいまいちよー分からん」
「誰にでもいっつも言うてるもんなぁ」
「なんや女子高生みたいなヤツやな」
「ほんなら明日、何回カワイイ言われるかそれぞれ一回数えてみよか」
次の日、千歳は相変わらずカワイイを連発していた
「部長、オレ今日だけで6回も言われてたっすわ」
「おっ!財前がいっちゃん多いな、ベスト・オブ・かわいか賞受賞おめでとさん」
皆が財前に拍手を送っていると、
後ろからワナワナと震える小春が現れた
「ちょっとちょっとおかしいわよォ...四天宝寺一カワイイが似合うアタシがおんのに....なんでアタシには一回もカワイイて言わへんのォ!!!」
泣きだす小春にユウジはオロオロしている
「ほ~あの千歳にも一応好みがあったんやなぁ」
「なんやて蔵リン!!そんなはずあらへんっリボンまで付けてたいうのにっっっ!!!」
「どんだけ必死やねん」
そんな中、当事者の千歳がやってくる
「あっ!ちょっとアンタ!!」
「ん?なんね小春」
「どういうつもりっ!?アタシだけピンポイントにカワイイて言わへんのはっっっ!!!」
「あ~....」
千歳は言葉を濁すと明後日の方向に目を逸らした
「ヨシヨシ、小春はいい子ったい」
坊主頭を撫でる千歳に小春の沸点は最高潮に達した
「やからカワイイて言いなさいよォォォォォォ!!!」