第10章 【underground】
疑わしそうな目でロンがクリスの顔をのぞき見たので、クリスはギロリと睨み返してやったが、否定できないのがなんとも悔しかった。どう考えてもクリスは誰にでも優しくないし、胸がぽかぽかするような笑顔も出来ない。
「レイチェルは元気か?たしか卒業後は、本格的にルーンの魔法を勉強したいと言っとったが」
「母様は……私を産んだ時に亡くなったんだ」
「レイチェルが? ……そうか、そりゃあ……残念だ」
重い空気が漂い、皆黙り込んでしまった。小屋の中では暖炉の薪が燃える音と、その上にかかっているやかんの湯が沸く音だけである。
「そっ、そうだロン!兄貴のチャーリーはどうしてる?ヤツは魔法生物の事にかけては誰よりも熱心でなぁ」
その気まずい雰囲気を吹き飛ばそうと、ハグリッドのやけに明るい声が響いた。突然話しをふられたロンも、やはりいつもより明るめの声で切り返した。
「あぁ、チャーリーなら今はルーマニアでドラゴン関係の仕事をしてるよ!」
「ドラゴンか、そりゃあイイ!!一度でいいから本物のドラゴンを飼ってみてぇもんだ」
今度のハグリッドの声からはわざとらしさが消えて、本音らしかった。きっとドラゴンを飼うことは法律で固く禁じられているから、余計に憧れが募っているんだろう。
それからまたしばらくお茶を飲みながら、夕暮れ時までこのお茶会を楽しんだ。ハグリッドはやはり駅で助けてくれたとおり、見かけよりも断然気さくで優しく、お土産にロックケーキをいくつか包んでくれると言った。
ハリーがロックケーキを食べようとした時『ガツッ』という岩をかむような音を立てていたので正直あまり嬉しくはなかったが、クリスはとりあえず貰うだけ貰っておいて、悪いが後で処分させてもらうつもりで、ハグリッドがロックケーキを包んでくれるのをぎこちない笑顔を浮かべながら眺めていた。
「あっ、これ見てよハグリッド」