第10章 【underground】
テーブルのマットの下から紙切れを見つけたハリーは、興奮した様子でその内容を読み上げた。
「『グリンゴッツ銀行に侵入者!?――7月31日、ロンドンのグリンゴッツ銀行に何者かが侵入した痕跡が発見されたが、犯人は未だ見つかっておらず捜査は依然として続けられている。しかしグリンゴッツの子鬼達は今日になって、“荒らされた金庫は侵入されたその日にすでに空になっており、何も盗られた物はない” と主張した。また報道官は“そこに何が入っていたかについては答えられない。詮索しないほうが皆様の身のためです”とのコメントも残している。』この日は僕の誕生日で、僕達ちょうどグリンゴッツに寄ったんだよね。もしかしたらその時犯人がいたかもしれないよ」
野次馬根性で事件に興味を示したハリーの手から、ハグリッドは半ば無理やり記事の切抜きを奪った。その意外な行動に、ハリーもロンもクリスも驚いた表情でハグリッドを見つめた。これまでの数時間、ハグリッドがこんな力ずくでの行動は見ていなかった。
「さ、お前ぇさん達そろそろ城に戻る時間だ。早くしねぇとフィルチのクソジジイに、何言われっか分かんねえぞ」
ハグリッドは記事をポケットにつっこみ、3人の手にお土産のロックケーキを持たせると早く帰るよう促した。その明らかに動揺し、しかもそれを隠そうとする行動から、ハグリッドがこの事件について何かを知っているのは確かだった。