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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第10章 【underground】


 グレンジャーはついに立ち上がり、体をスネイプとハリーの方に向けた。これ以上自分を無視させまいとの行動だったが、スネイプは振り返るそぶりさえ見せない。クリスは笑って良いのか怒って良いのか分からず、心の半分ではハリーに同情しながらも、もう半分ではスネイプに拍手を送っていた。

「分かりません。ハーマイオニーが分かっているようですから、彼女に聞いてみたらどうですか」

 反抗的なハリーの言葉に、スネイプはピクリと眉を上げ、グレンジャーは顔を輝かせた。ハリーとしてはこの責め苦に限界を感じたのだろう、これでグレンジャーの惨めな姿が見られなくなったと思うと少し残念だが、それでもハリーを非難する事はできない。
 スネイプはグレンジャーを肩越しに見据えながら「座れ」と冷たく言い放つと、再びハリーに向き直った。

「なるほど、貴様はこの夏休み中はおろか、休み時間にも1度も教科書を開こうと思わなかったというわけだ……よかろう。――アルフォデルとニガヨモギはどちらも神経系に作用する毒草で、これらを煎じた物を加えると強力な睡眠薬となる。あまりに強力なため「生ける屍の水薬」ともよばれている。ベゾアールとは山羊の野生原種の事だ。石は多くの解毒剤となり、手に入れるには胃の中から取り出すしかない。モンクスフードはその形から、ウルフスベーンは狼をも殺す強い毒性を持つことから着けられたトリカブトの別名だ。またの名をアコナイトとも呼ぶ。――どうした諸君、何故今言ったことを書き取らん」

 皆一斉に羊皮紙と羽ペンを取り出し、急いで書き始めた。クリスは斜め後ろの席から、屈辱に顔を赤らめ今にも泣きそうなグレンジャーを見て、密かにほくそ笑んだ。出しゃばりすぎるから、当然の報いだ。これでヤツも少しは大人しくなるだろうと思うと、机の上で小躍りでもしたい気分だった。
 その後、ハリーが反抗的な態度を取ったという理由でグリフィンドールから1点減点すると、スネイプは生徒達ににきび薬の作り方を説明し、早速調合に取り掛からせた。

 グレンジャーがしゃしゃり出ないというだけで、クリスの作業は驚くほど順調にすすんだ。唯一癪に障ったのは、スネイプが作業を見回りながらほとんどの生徒に難癖をつけたくせに、ドラコの角ナメクジの茹で方は素晴らしいと褒めた事だ。
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