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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第10章 【underground】


 机を3つほどまたいだ斜め前方で、グレンジャーが天井と垂直に手を上げているのが目に入り、クリスは心の中で毒吐いた。ハリーが答えられなければスネイプがグレンジャーに答えさせるのは分かりきっている。どうせこの場で質問の答えが分かる生徒はグレンジャーだけだ。ハリーが答えあぐね沈黙が続く教室で、クリスは微かに鼻を鳴らした。

「分かりません」

 たっぷり時間をかけて悩んだ挙句、ハリーの答えはその一言だけだった。ついに自分の出番が来たかと、あげた手をさらにもう5センチ高くしたグレンジャーに、クリスは小さくした打ちした。
 だがスネイプはそんなグレンジャーに見向きもせず、ハリーに向かって鼻で笑っただけだった。まるでグレンジャーの存在など、目に入っていないように。

「有名だけでは何の役にも立たぬらしいな――では、ベゾアール石はどこを探せば見つかる」

 ハリーが答えられないのを確信し、馬鹿にしきった声でスネイプは次の問題を出した。それと同時に、「今度こそ」と意気込み体を伸ばせるだけ伸ばしてグレンジャーが手を挙げたが、それでもスネイプはグレンジャーを無視し続けたので、クリスはつい嬉しくなった。ハリーには悪いが、あともう2・3回こういう質問をして欲しい。そうすれば、憤怒と屈辱に顔をゆがめるグレンジャーが拝めるかもしれない。

「分かりません」

 今度の答えは、1回目よりも早かった。グレンジャーがわざとらしく咳払いをして自己主張しようと、スネイプはねっとりとした視線でハリーを嘲るのを止めなかったので、クリスはもう口角が上がるのを堪える事ができず、両手で必至に自分の口を覆い隠した。

「英雄殿もたいした事はないらしい。……では最後のチャンスだ、モンクスフードとウルフスベーンの違いを答えよ」

 ハリーの表情はすでに困惑から怒りに変わっていた。だがスネイプはそれを心の底からたのしんでいるかのようで、意地の悪い笑みを浮かべながらハリーを観察した。
 今や教室全ての生徒の目がハリーとスネイプに向けられている。グリフィンドールの生徒は怯えた目でハリーを見守り、スリザリンの生徒は嘲笑を浴びせていた。
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